只見川と叶津川の合流点の瞑想に参加したS君が私に質問した。
「皆さん川の側で、じっと座っているけど、あれっていったい何してるんです
か?」
S君は瞑想したことがないし、瞑想が何かまったくわからないらしい。そこで
私はじっと座って何をしているかを説明した。
瞑想で一番大事なことは体の動きを止めることです。身体の動きは完全に止め
ることは出来ません。なぜなら地球が宇宙空間を動いているからであり、生き
ている身体も瞬間、瞬間に変化しているからです。私達の小腸の栄養吸収細胞
は1500億個ありますが24時間で全て生まれ変わります。1秒間に170万個生まれ
かわっています。胃の粘膜細胞は2~3日で入れ替わり、肌の細胞は一ヶ月で入
れ替わります。
どうしてじっとしていなければならないかというと、自分の皮膚の内側を観察
しようとする場合、体を動かしていると内部感覚をあれこれ観察するのが難し
いのです。体の動きを止めると、呼吸がリズミカルに落ち着きます。さらに目
を閉じて外部からの情報を遮断すると心の動きが静まり、さらに意識的にゆっ
くりした深く長い呼吸をすると、思考(雑念や妄想)が静まって感じる心が強く
なります。思考力が静まった分、知覚力(観じようとする心)が出てきます。
その観じようとする心で身体内部のさまざまな感覚を観じて行くのが瞑想の第
一歩です。体を動かさないようにするとき、背筋を真っすぐにすることが肝心
です。背筋が真っすぐでないと頭がボーとして眠くなります。背筋を真っすぐ
にして生命エネルギーの流れを良くすることが良い瞑想に入るために必要なこ
となのです。背筋を真っすぐに保つことが緊張です、体の動きを止めることが
緊張です。随意筋はすべてリラックスさせます。
以上が内部感覚を観察する準備です。準備ができたら、外界からの音や光や風
やコスミックエネルギーが内部感覚にどのように影響を及ぼしているのかを観
察します。川の流れの音や鳥の囀りが内部感覚とどう結びついているかを観察
します。観じようとする心で意識的に身体内部のさまざまな動きを知覚します。
つまり、体全体を一つものと観じて、その内部で起こっているさまざまな変化
を観じていきます。内部感覚として、どの部分が明るく感じるか、どの部分が
暗く感じるか、明るさ暗さの部分が時間と共に変化して行くのを観じていきま
す。同じように暖かさ冷たさ、重さ軽さ、濃密さ希薄さ、等の感覚が変化し体
のなかで動いていくのを観じてみます。細かな振動やバイブレーションがどこ
で起こりどこに広がり消えていくか等も観じるようにします。それが瞑想で
「する」ことです。瞑想で私達がしなくてはならないことは体の中身が動いて
いるということを感覚的に観じることです。出来るだけ細かく心を鋭敏にして
観じていきます。
そこまでが「する」ということ、プラティヤハーラ(制感法)、ダラーナ(集中
法)です。ディヤーナ(瞑想) サマージー(三昧) は整ったところに「起こる」
ことです。瞑想は整えて行くとそこに現れ起こってきます。体の動きを止め、
呼吸を整え、内部感覚と観じようとする意識的な心をしっかり結びつけるとデ
ィヤーナが起こります。
体が地球内部に高速エレベーターでストーンと落ちていく感覚、ロケットに乗
って宇宙空間に飛び出していく感覚、三次元的な方向感覚がまったく消失した
感覚、水平方向に身体感覚が無限に広がってゆく感覚、身体内部の動きが静止
して全てが穏やかな光に満たされクリヤーに均一になった感覚、平和で静かな
喜びに満たされている感覚等が起こります。本当の自分を少しだけ垣間見たよ
うな感じです。意識的な観じようとする心を内部感覚に結び付け、内部感覚に
浸すようにしていると、感情や潜在意識がだんだん純粋になっていきます。そ
のとき、自分だと思っていたことが全部自分でなくなり、本当の自分に出会う
でしょう。本当の自分に出会った時、不安や恐怖が消え、悩みや病が消え、真
の健康を獲得し、平和と至福に満たされるでしょう。自己救済の道が瞑想の道
です。なぜ多くの人は瞑想しないのでしょうか、人間としてしなくてもよい事
ばかりしていて、しなくてはならないことをどうしてしないのでしょう? 明
確な目的地を持って一歩、一歩、道を歩く者だけが目的地に到達できます。
あなたは何処へ行きたいのですか? 何処に生まれたいのですか?
<著:坂本知忠>
(協会メールマガジンからの転載です)