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2014年8月27日水曜日

コラム[仏教の源流・ジャイナ教との類似]   

何事も一部分のみを見ているだけでは本当のことは解らない。物事を広く深く
観察して考察することが瞑想である。時間と空間を拡大して考察し、さらに
そのことが起こってきた背景までも考察する。すると、疑念が解け、理路整然
となって本当のことがスッキリ腑落ちする。

河口だけ見ていても川の本当の姿は解らない。川の中流や源流をも見なければ
ならない。さらに川を理解するためには、地球の自転や海について理解し、大
気の流れや雲、雨、水の性質、どうして水が多量に地球に存在しているかなど
を考察する必要がある。

同じように、広く深く考察することで、私達日本人が仏教と思っている概念の
ほとんどは仏教であって仏教ではないことが解る。日本の仏教は広い意味での
仏教のカテゴリーに包括されるかもしれないが、その実態はゴータマ・ブッダ
(仏陀)が説いた仏教とは程遠いものだ。また、初期仏教を正しく継承してい
ると言われているテーラワーダ仏教でさえ疑わしく思えることがある。

仏教の草創期、仏教の源流、つまり仏陀が生きていた時代から没後百年ぐらい
までの初期仏教がどのようなものであったかが解らないと、私たちは後世の人
の創作を仏陀が説いた教えであると間違って受け容れてしまうことになる。

幸い私は仏陀と同時代から今日までインドに続いているジャイナ教を通して初
期仏教との共通点や相違点を探って来たので、初期仏教がどのようなものであ
ったか、又、ジャイナ教やヒンドウ教との比較の中で宗教とは何かがとても良
く理解出来るようになった。日本仏教についても格段に理解が進んで本質的な
事が良く解るようになった。

古来、インドにはバラモン教の流れと、シュラマナ系宗教の流れがあった。バ
ラモン教はアーリヤ人の奉ずる宗教で本来寺院を持たなかった。バラモン教の
伝統の中に自業自得の哲学があった。一方、シュラマナ系は土着的なインド先
住民の奉ずる宗教で輪廻転生がその哲学の中にあった。紀元前八世紀ごろ、こ
の二つの宗教哲学、自業自得と輪廻転生が出会い解脱思想が起こった。この解
脱思想こそインドに起こった宗教の根幹をなしている。

解脱思想の流行でバラモン系からもシュラマナ系からも沢山の出家者が現れた。
世俗の生活では解脱出来ないというのがその理由だった。世捨て人となって、
世俗的なことを何もなさないことを理想とした。出家は家庭を持たず、仕事も
持たず、食事の支度もせず、屋根の下に寝ず、ボロをまとい、中には素っ裸に
なった者もいた。

輪廻転生の原因であるところのカルマを根絶するために苦行と瞑想することが
修行の中心だった。

こうしたなか、紀元前5、6世紀頃、シュラマナ系修行者の中からマハーヴィー
ラとゴータマ仏陀が現れた。マハーヴィーラは苦行(断食行)と瞑想を通じて
解脱した。一方仏陀は瞑想しても苦行しても解脱に至らなかったので、修行法
にどこか欠陥があるのではと思い因果律(カルマの法則)について徹底的に考
察した。そして従来考えられていた因果律の欠陥を発見しそれを教えの基本と
した。それがブッダの教え、根本仏教である。

マハーヴィーラグループもゴータマグループも哲学的に大きな差異はなかった。
仏陀は理想主義者ではなく、現実主義者だった。現実主義者である仏陀は悟り
を開いてから、在家信者からの寄進や布施に対して理想主義的な出家者のよう
にこだわりを持たなかった。

食事の接待を受けるようになり、常に綺麗な衣を纏うようになり、屋根のある
大きな建物にも寝起きするようになった。その頃、発達し始めた都市国家の担
い手、有力な商人がこぞってジャイナ教や仏陀等の自由思想家達に帰依したが、
仏陀の教えがより多くの人々の心を捉えたのだと思う。仏陀が生きていた時代、
ジャイナ教徒からは弟子のサーリープッタが仏教教団の代表のように思われて
いた。サーリープッタは仏陀に帰依する前、サンジャヤ(注:六師外道の一人、
鰻論法で知られる懐疑論・不可知論者。シャーリプッタは仏陀が因果律を説く
と聞き兄弟弟子のモンガラナーと共にサンジャヤの下を去り仏陀の弟子になっ
た)の弟子であったので、経験的な事実に基づかない宗教哲学理論を師のサン
ジャヤと同じようにのらりくらりとした掴みどころのない戦法で否定したと思
われる。ブッダも恐らく同じような考えを持っていた。それが十難無記である。
十難無記の中に魂が有るか無いかの問題があった。

仏陀は魂が有るとも無いとも云わなかったのが真相だと思えてならない。なぜ
ならその頃の出家修行者の間では魂があるのは当たり前の考え方であり、自業
自得の因果律と輪廻転生の哲学、輪廻からの解脱とそのために出家するという
ことは広く受け入れられた考え方だった。仏陀もマハーヴィーラも言っている
ように、出家しなければ解脱できないというのがその当時の共通した考え方だ
った。出家主義は今もジャイナ教や南伝仏教に生きている。

バラモン教は仏教とジャイナ教の影響を受けて、紀元前3世紀頃、その当時有
ったインドの民間信仰を何でも採り入れて、インドのなんでもあり宗教に変化
したが、その基本的な教えはベーダンタ哲学である。ベーダンタの修行体系、
ジャイナ教の修行体系、初期仏教の修行体系はいずれも、出家を中心にしてカ
ルマの根絶、輪廻転生からの解脱に取り組むものである。その方法は多少の相
違はあっても瞑想と苦行(タパス)であった。仏陀は極端な苦行は無意味とし
たが、苦行は悟りや解脱に必要なものとして位置づけていた。共通項として他
律を廃し自律を重んじた。

ヒンドウ教にあっても、修行とは自分で自分を助け救う悟りの希求だった。
要約すると、自業自得で汚れた魂を清らかにする道、カルマを無くす方法が修
行であり、その哲学がインドで生まれた宗教であり、輪廻転生からの解脱がそ
の目的である。


<著:坂本知忠>
(協会メールマガジンからの転載です)

第2回プレクシャ・コミュニティ開催のご案内

第2回プレクシャ・コミュニティ開催のご案内(中村正人)

皆さま、暑い日が続きますがいかがお過ごしですか?

大変長らくお待たせいたしました。2度目となるプレクシャ・コミュニティ
「交流会」の開催が決定いたしました。

現在(8/22~29まで)、ジャイナ教のお祭りがインド各地で開催されています
が、東京でもインドからジャイナ教の司祭を招き、連日一連の儀式が行われて
います。

その先生(*1)が、祭祀がすべて終わった後、私たちのために帰国を一日延ば
してお話をして下さる運びとなりました。又とない機会です。ぜひとも万障お
繰り合わせのうえ、ご出席ください。(原則として事前の予約が必要です)

日時: 8月30日(土)12:00集合
場所: 完全菜食インド料理店「ヴェジハーブサーガ」
(上野5-16-9サンエイビル地下(JR御徒町駅から徒歩2分))
ホームページ:http://www.vegeherbsaga.com/shop.html

昼食に引き続いて、13時ごろから交流会をはじめます。参加は食事からでも、
交流会からでもかまいません。ただし、人数によって場所が変更になることも
ありますので、参加ご希望の方は予めご連絡ください(可能な限り、フェイス
ブックの「プレクシャ・コミュニティ」グループでも告知いたします。
https://www.facebook.com/groups/465120036943301/)

参加費:無料(昼食代等の実費は各自負担)

予約・お問合せ:savita.nakamura@gmail.com(中村)

*1 先生の紹介:
Deepakbhai氏。ジャイナ教の指導者で、インド各地でグルたちや子どもたちに
ジャイナ教の儀式やマントラ、教義の内容について教えているそうです。
グジャラート州Kach出身。

第56回 プレクシャ・メディテーション研究会 開催のご案内

第56回定期研究会を下記のとおり開催いたします。ふるってご出席下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。

次回:2014年9月1日(月)19:00~21:00
場所:集会室1(地下鉄東西線「南行徳」駅から徒歩1分)
講師:中村正人

テーマ: カヨーウッサグの疑問を解く

前回までで一通りカヨーウッサグの概説が終わりました。皆さんもこれまで
いろいろな機会にカヨーウッサグを実践し、あるいは教えてこられたと思い
ますが、その中で多くの疑問を持たれているのではないでしょうか?

次回の研究会では、そうした様々な疑問を自由に提出いただき、その解を探し
たいと思います。出席される方は、前日までにご連絡ください
(savita.nakamura@gmail.com)。
現在翻訳中のアチャーリヤ・マハープラギャ著『プレクシャ・メディテーショ
ン:リラクセーションによる真我の気づき』の下訳をメールに添付してお送り
します。当日はその内容も含めて疑問点を検討します。

※前回参加した方は資料もお持ちください。
※事前に連絡をいただかないと資料を受け取れないことがあります。
※参加費は会員1,000円/非会員1500円です。

【今後の開催予定】
・2014年10月6日(月)19時~21時 場所:南行徳
・2014年12月1日(月)19時~21時 場所:同上

※定期研究会は、原則として、第1月曜日に開催しています。