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2014年4月28日月曜日

コラム[地球温暖化の脅威]

「スペースシップの客室維持装置に異変あり」 NHKBS1 2014年1月17日放映
を観て考えたこと

1990年頃からずっと暖冬傾向、小雪傾向だった只見の冬が、2010年頃から少し
様子が変わって厳しい寒さと大雪傾向に変わってきた。地球の温暖化が進んで
いるはずなのに何でこんな現象が起きているのだろうかと疑問に思っていた。
只見の夏は暑くなる傾向は今までと変わらず、暑い季節がだんだん長くなる傾
向をみせている。なのに、どうして冬が厳しくなったのか地球気候のメカニズ
ムがよくわからなくなっていた。

その理由は、地球の海水温の上昇であり、特に北極海の海水温が上昇してきて
いるためだと解った。冬、北極海の上空の大気が海水に温められて、シベリヤ
や北米大陸上空の大気より暖かくなっているのが原因だった。本来、北極上空
にある冬の寒気がシベリヤや北米大陸の方に移動し大きく南に張り出している
ためであった。只見の近年の冬の厳しさは寒冷化ではなく地球の温暖化の現れ
だったのである。

地球温暖化は起こっていないという学説が4、5年前流布していたが、間違いな
く温暖化は進んでいるし、加速してきているというのが、日々天候に敏感に生
きている私の実感である。3.11の東日本大震災以来、マスコミの報道は被災地
の復興状況や原発事故処理の進捗状況、又、近未来に起こるであろうとされる
東南海地震や首都直下型地震の報道に偏ってしまい、地球温暖化の問題はほと
んど報道されることがなくなった。日本人の意識から地球温暖化・気候変動問
題の深刻さが、すっかり抜け落ちてしまっている。

産業革命以来、人類は物質文明を発達させてきた。この250年間に人口は7倍
に増え、化石燃料の使用量は50倍にもなり、大気中に二酸化炭素・CO2を大量
に放出し続けてきた。CO2の放出も自然環境がそれを吸収できるうちは良いけ
れど、植物や海水がCO2を充分吸収できずに大気中に溜まってくると、それが
温暖化の原因となる。現在は毎年自然環境が吸収できる量の2倍のCO2が人間活
動によって排出され続け、大気中に増え続けている。

CO2の増加によって地球温暖化が始まったのであるが、地球の温暖化が進行す
るにつれさらに困った問題が起こってきた。夏期にシベリヤやアラスカの永久
凍土層が溶けてメタン生成菌が目覚め、永久凍土層の中に閉じ込められていた
有機物を分解しメタンガスを大量に発生させているのである。今ではこの地域
の永久凍土層の60%が夏期に溶解している。永久凍土層の中にはおよそ4万年
分の有機物が閉じ込められていると考えられていて、それがメタン生成菌によ
って分解されメタンガスを発生させ始めているのだ。

メタンガスは太陽光の紫外線を受けると分子が振動して、その時に熱を発生す
る。その熱はCO2に比べて20倍の温室効果をもたらすと研究されている。2013
年に『2052-今後40年のグローバル予測-』という本が出版されたが、その本
の著者BIノルウエービジネススクール教授ヨルゲン・ランダースは、閉じ込め
られていたメタンガスの大気中への放出が人類のパンドラの箱になると警告し
ている。

グリーンランドの氷河の融解が進んでいるが、近年になって溶けていく氷河に
黒い小さな穴が沢山あく現象が見られるようになった。科学者が調査してみる
と、氷河の中に閉じ込められていた植物系のシアノバクテリアという菌が土砂
を取り込み粒状になって、オリノコナイト粒を形成しているためだった。この
オリノコナイト粒が太陽光を吸収し氷河の溶解を加速させていることが判明し
た。

海底にメタンハイドレートとして閉じ込められているメタンガスが海水温の上
昇で海中に溶け出し始めている。東シベリヤの大陸棚の平均水深は65メートル
程度で比較的浅い。そこでどのくらいの量のメタンハイドレートが溶け出して
いるかを調査したところ、2012年に全海水から溶け出した量の50%がこの海域
から溶け出していることが解った。夏期の北極海の海水温上昇が顕著なためで
ある。

大気中のメタンガス濃度の上昇が地球温暖化を促進し、温暖化の進行によって
さらに大量のメタンガスが大気中に放出され、さらなる温暖化が加速する。そ
ういう悪循環が始まりつつある。この悪循環によって地球の平均気温は6℃~8
℃にまで上昇して人類文明は崩壊してしまうと予測されている。IPCCの気温上
昇予測は控えめなのかもしれない。

宇宙船地球号という考え方がある。50年前にアメリカ人、バックスミンス
ター・フラーによって提唱された考え方だ。一人一人の人間がスペースシッ
プ・アースに乗り合わせた運命共同体という考え方だ。

今、その宇宙船が危機的な状況になって、人類の未来に暗雲を投げかけている。
地球温暖化問題は、人類自らが引き起こしたもので人類全体の業・カルマであ
る。生物はとても利己主義的である。人類とて例外でない。自分の孫達(未
来)や他国の人や他のグループにとって良いことよりも、現在の自分たちにと
って良いことを優先してしまうからだ。

又、なかなか持続可能な社会への転換が進まないのは、人間の限りない欲望が
妨げになっているからだ。人間の根本欲に無限の自由をめざす欲望があって、
現代人はもっともっとお金、もっと良いもの、もっと便利なものをと常に求め
ている。本当に必要なものは何か、必要最小限のもので生きる知恵と道徳、価
値観がその欲望に負けているからだと思う。

地球に存在する限りある資源エネルギーを節約し未来の世代のために残し、今
の私たちは孫たちの将来のために忍耐し、最小限の物だけで、それも所有する
のではなく、みんなで共有し分けあって生きる知恵が求められている。資本主
義経済ではなく、持続型経済主義である。世界には人口1000万人を超える巨大
都市が現在23も存在し、これはエネルギー多消費型で持続可能な社会とはいえ
ない。巨大都市に一局集中する大量生産大量消費の物質文明でなく、分散型、
自立型社会への転換が必要なのだ。消費者と生産者が近づいて、エネルギーや
食料をコンパクトな地域内で自給自足する生活様式への転換が求められている
のである。それによって無駄な輸送にかかるエネルギーが削減できる。日本で
いえば廃県置旛のようなことである。国土が100位の地域に分化して、それぞ
れがエコライフと幸せな生き方に工夫をこらし、地域ごとに特徴をもって自立
するのが良いと私は考えている。封建時代のような不自由な制度ではなく、
人々が住みたいところに住み、職業選択も旅行や移動も自由でなければならな
い。

<著:坂本知忠>
(協会メールマガジンからの転載です)